本レポートでは、2024年4月8日・4月12日に日本ストレスマネジメント研究所主催、Wellbeing_labの後援、大阪府の協力で行われた「新入社員のための合同ヘルスケア研修会」についてご報告させていただきます。
当日ご参加いただきました皆様、見逃し配信によりご視聴いただきました皆様には、あらためて御礼を申し上げます。
今回のセミナーは、2023年から再開した毎年恒例の研修会となっており、昨年同様、3部構成で開催いたしました。
はじめに「社会人に求められる健康管理の基礎知識」
セミナーの冒頭はこんな話から始まりました。
「スポーツ選手じゃないんだし、健康管理より他のビジネススキルを上げる方が優先されるのでは?」
「健康状態は仕事の成果を大きく左右します。
なんとか働ける最低限の体調でなく、自分で最高と思えるパフォーマンスを発揮するための健康を維持することが重要です。」
これから新しい会社で働くみなさんにとって、毎日の健康管理がなぜ大切かという基本的な考え方について産業医・労働衛生コンサルタントの稲田礼子先生よりをお話いただきました。
出勤しているがパフォーマンスが低下している「プレゼンティーイズム」について説明いただいた後、若くても注意な必要な疾病として感染症、メンタル不調の2点について解説していただきました。

セルフケアには、健康問題を未然に予防する、不調に早く気づき対処する、再発を予防するなどが含まれます。
感染症もメンタル不調も早く気づいて対処ができると良いのですが、相談せず1人で抱え込んだり、無理に出社をした結果、悪化してしまうことがあります。
稲田先生からは、「この先、どこか調子が悪い気がするな、相談した方がいいかな、と思った場合は、是非周りの人に相談し、協力を求めてください。」とお話をいただき、そのための具体的な知識を第1部・第2部で学んでほしいと新入社員のみなさんへメッセージが伝えられました。
第1部「健康を支える生活習慣」
続いて、第1部では保健師の景山名菜子先生より「健康を支える生活習慣」について、「睡眠」「食事」「運動」「喫煙・飲酒」の4つの観点からの正しい生活習慣について解説いただきました。
「睡眠」では、昨年の11月のフォローアップ研修にご参加いただいたみなさんのアンケート結果を参考に、睡眠時間が短い人は「睡眠の満足度が低い」と答えているとのお話がありました。
必要な睡眠時間は人によって違いますが、まずは量(7~9時間)を確保した上で、睡眠の質を高める工夫をすることが効果的です。
「食事」では、野菜、魚、塩分、炭水化物(糖質)などの適切な量と質について解説いただきました。
景山先生が自宅で実際に作られている「トマチーお好み焼き」など、野菜がしっかり摂れるメニューの紹介もあり、実践的な内容をお話いただきました。
「運動」では、生活習慣病予防に効果的な運動量をご紹介いただきました。
歩行と同じ位の運動を毎日60分+息がはずみ、汗をかく程度の運動を週60分が運動量の目標だそうです。
研修では、まずは+10分から始める+10(プラステン)ということで、景山先生自身や関連法人で行っている取り組みもご紹介いただきました。
「喫煙・飲酒」では、わずかな喫煙・飲酒量でも、発症するリスクが高まる病気があることをご説明いただきました。下の表では、1日のアルコール摂取量が発症リスクに影響していることがわかります。

お酒を飲まれる方はお酒自体の量だけでなく、実際に体に取り込まれるアルコール量も意識するようにしてください。
また、毎日飲む人は休肝日をもうけて、アルコールを摂取しない日をつくるというのも、大切です。
景山先生からは今日から取り入れられるちょっとした工夫や、意識したいポイントを教えていただき、知っていたことも知らなかったことも、少しやってみようと行動に移すきっかけになるような講演をいただきました。
第2部 「メンタルヘルス不調を予防するストレスマネジメント法入門」
第2部では公認心理師・臨床心理士の平川沙織先生より「メンタルヘルス不調を予防するためのストレスマネジメント入門」についてお話いただきました。
「今、眠いですか?」
という問いかけから始まり、不眠症状がメンタル不調のサインとして見られやすいことを説明いただきました。うつ病患者の77~90%に不眠症状が出現するとも言われ、うつと睡眠は切っても切れない関係です。
景山先生のお話にあった毎日の睡眠の量と質、そして稲田先生のお話にあったように「単に眠いだけ」と軽く見ず、調子が悪いと感じたら周囲へ相談するといったことが大切になります。
平川先生の講演では、これまでの稲田先生・景山先生の講演内容と重なる部分も多く、メンタルヘルス不調の予防・ストレスマネジメントは、日々のセルフケアの積み重ねであることがわかります。
ストレスマネジメントについては、2つの視点からご説明いただきました。
まず「振る舞い」に現れやすい行動的反応は風邪をひきやすくなるといった身体面の反応、喫煙や飲酒の増加、拒食・過食、夜更かしなどの行動面の反応、不安げな様子やイライラした態度といった心理面が表れる反応は、自分でも周囲からも比較的気づきやすいことが特徴です。
一方、「考え方」に現れやすい認知的反応は、本人の頭の中で無自覚に起こり、自分でも周囲からもとても気づきにくい反応です。抑うつ状態では、○○をしないといけない、○○ができないからダメだ、と悪いところばかりに目がいってしまうようなネガティブな考えが活性化していると言われています。これが認知的反応の1つです。
ネガティブな考えは多かれ少なかれ誰にでもあるものですが、その嫌な考えや出来事を何度も何度もぐるぐる考えてしまうと、辛い気持ちを再生産することに繋がります。

ストレスへの対処法は質より量で、たくさん持っておくことが重要です。
普段から意識してたくさん取り組むことで、状況に応じて選べるようになり、バリエーションも増えていきます。
平川先生からは、「個人のストレスをなかったことにせず、気づかないフリもしない。まずは気づいて対処しましょう。そして、自己完結せずに相談していきましょう。」と今回の研修会を締めくくっていただきました。
さいごに
講師の先生方にはそれぞれのご専門から講演いただきましたが、セルフケアは毎日の積み重ねであり、困ったときは自己完結せず相談することが大切だという共通したメッセージがありました。
日々の仕事に追われていると、自分の健康や気持ちの余裕を振り返ることを忘れがちです。
研修を受けた社員のみなさんが時々自身の健康を振り返る機会が持てるよう、セミナーや研修会をご活用いただけると幸甚です。
今回の研修会は、2023年開催時の内容をベースにした講演となっております。
講演内容をより詳しく知りたい方は、2023年のセミナーレポートをご参照ください。
本記事は講師の許可を得て日本ストレスマネジメント研究所が独自にまとめたものです。